【なぜ動かないコンピュータは出来るのか?】
午後は見積書を作成したり、納期を確認したりといったディスクワークがスムーズにこなせれば定刻で帰社できます。途中に会議や外出があれば、ディスクワークは残業になるか?帰宅してから会社のパソコンにログインして急ぎの仕事だけ終えるという感じでは無いでしょうか?この一連の流れで必要になるのが、メールソフトやグループウェア、そして見積書等の業務アプリケーションです。さてこの中でメールソフトは一般的なアプリケーションですが、グループウェアや見積書のソフトは少し違います。特に見積書は今でもエクセル等で各自が自分のパソコンで作成しているという場合も珍しく無いでしょう。見積書のフォーマットは会社で統一しているのは当然でしょうが、顧客データや商品データ、見積書そのものは各自のパソコンのエクセルで管理していれば、各自各用でバラバラなのが普通です。見積書を頼んだら前の担当者と全く違う商品を推薦してきたとか、顧客の情報が間違っている等、トラブルが続出し出すと全社で統一した物が必要だと感じるようになったりします。以前は電算部門が全ての書類を管理していたので、同じフォーマットで同じデータを使って見積書を作っていました。パソコンが一人一台以上になると、担当者が各自で見積書を作るようになるので、電算部門は実質無くなったという会社が大半になりつつあります。各自でという管理が実は後々会社にとって様々な理由で統一性が無く問題になってしまった訳ですが、100人の社員がエクセル等でバラバラにやっていた仕事を一つのソフトで統一した形にしようとするのがシステムの導入な訳です。システムの導入は複数の社員を同じ方法で一つにして動かすような事なのですが、トップダウンで命令してもその先の業務が円滑に行かなくなったら会社にとっては大きな損失です。システムの導入を社内で推進する担当者は会社の業務を誰よりも理解している必要があります。更には社員の意見やニーズを十分に整理する必要があります。この2つが出来る人物は恐らく社内でも最も忙しい人だと思います。システムの導入に失敗したという例の大半が、導入までの作業を手が空いている適当な社員に押しつけたというものです。それは社長だったとか?いう例もありますが、社員の気持ちが分からないのにシステムは上手く行く何て事はありません。社内のコミュニケーションが最も円滑に出来る人物は失敗するようなシステムは無理に導入もしないものです。
【動かないコンピュータを生み出す人とは?】
もう随分昔の話ですが、システムの導入について意見を聞かれ「止めた方が無難です」と答えたら物凄く怒られた事があります。相手はそこそこ大きな商社の社長さんです。システムを開発する人間を呼んで「止めた方が良い」何て言われた事が無いとも言われました。また「自分が出来ると思った事は可能だ」とも言われました。恐らく今呼ばれて同じ事を聞かれたら「出来ると思います」と素直に答えそうですが、当時の技術水準では「止めた方が無難でした」。動いても十分に実用にならない物はシステムとは呼べません。10年前と比較すると現在では実用にならなかった多くが実用になります。ただ一つ何も変わっていないのが人間の問題です。幾らコンピュータに慣れていても人は間違えます。更にコンピュータも思ったような動作をしない事がかなりあります。特に可動部分が多いプリンターなどは不調になる事を前提としたシステムを作らないと困ります。人はミスをして、コンピュータや周辺機器は故障する。インターネットの回線もいつも正常とは限らない。駄目な場合の回避策もシステム設計の大きな課題の一つです。 システム導入に確実な成功作はあるか? 過去から現在に至るまでに、あまりにも多くの問題を見続けて来た経験から言えば、確実に成功するシステム導入は無いし、確実に失敗する導入も無いと言えます。はっきり言えるのはコンピュータのシステムは導入に関わった人達そのものになります。関わる人が複数で価値観が様々だとしたら、実は一緒に仕事はしない方が良いと言えます。同じ価値観であっても、面倒な仕事は嫌がる人は外れて貰った方が良いでしょう。結果よりプロセスを大切にする人は好ましいと言えます。システムの導入は仕事と割り切っては無理な部分もあるので、ある程度の情熱も必要です。ただし、自分の意地とか名誉の為にと思うのなら関わって貰わない方が無難です。忍耐力も必要です。気が短い人が管理者であれば、まず成功しません。まあ、忍耐と言うよりも時間は掛かって当然で思ったように動かない事も途中のプロセスとしては当たり前と受け取る意識が大切です。ここまで書いて、今関わっている開発もここに書いた問題を全部持っているような人物が外れて上手く行くようになりました。分かっていても諸般の事情から外すのが困難でしたが、その人物が言い訳できない問題を引き起こし、フェードアウトを余儀なくされたというラッキーな事件がありました。